研究紹介

 技術科学の探求と応用、すなわち、スマートセンシングやフォトニクス情報デバイスなどエレクトロニクス革新技術の研究と先端的応用分野(ロボティクス、情報通信、ライフサイエンス、農業工学、環境、防災など)との融合研究を発展させることを目的とした研究拠点です。

 

[基礎研究部門]革新センシング技術創成分野

 これまで本学で蓄積してきた世界的にも高く評価されているセンサ・MEMS技術と半導体集積回路設計・製作技術とをもとに、様々なスマートセンサや集積化MEMSデバイスを実現してきました。さらに、化合物半導体や異種材料を取り込み、IoT社会に不可欠で成長産業でもあるセンサ・MEMS分野において、革新的なデバイスの研究開発を進めていきます。これらの強みと国内外の材料研究機関や応用研究機関と協働により、新たなコンセプトの次世代半導体・センサ技術の創成を目指します。

ニューラルインタフェース

 脳と接続するエレクトロニクス技術:半導体工学,MEMS,ナノテクノロジー,また応用側の電気生理学,脳神経科学の両方からこの技術を実現するためのエレクトロニクス,‘ニューラルインタフェース’の研究を進めています。このような研究は,機械やコンピュータを脳と接続するブレイン・マシン・インタフェース(BMI)の研究分野だけでなく,脳神経科学や脳治療にも貢献することができます。

農業用マルチモーダルセンサ

 植物体内の養分や水分量,各種イオンの分布などをモルチモーダル計測し可視化するセンシングデバイスとシステムの検討を行っています。これにより植物の生育を左右する情報を正確に把握する事が可能となり,生育メカニズムの解明や,スマート農業における収穫量の増大につながる事が期待されます。

機械学習型マルチモーダルセンシング

 検出特性が異なる複数のセンサを組み合わせて多項目を計測し,そのデータ解析に機械学習技術を利用してマルチモーダルセンシングを実現する,新しいセンシングアプローチに取り組んでいます。CMOS集積回路技術で作製した画像出力型センサとAI技術の融合により,複数イオンの同時計測,複数ガスの同時計測やにおいセンシングの実現について研究を進めており,農業や介護・医療,バイオサイエンスの分野への展開を検討しています。

多点光照射を用いた単一細胞スクリーニング

 細胞は多様性を有しており、治療や研究の目的に沿って、細胞を分離することが求められます。従来の細胞分離に用いる「セルソーター」は大量の細胞を処理できますが、瞬間的な情報に基づいています。そこで顕微鏡とカメラで撮影した時系列の細胞画像を元に、経時変化を捉えた細胞を選択的に抽出します。ただし従来の細胞ピックアップの手法には、効率性が悪い課題がありました。ここではMEMSミラーアレイを使った多点光照射により細胞周囲のゲルを硬化させることで、効率的に細胞をピックアップします。

多項目バイオマーカー検出のためのMEMS光干渉型バイオセンサ

 身の回りでセンシングの対象となる、においや生体情報などの化学量を計測するセンサデバイスの開発は物理センサと比較して研究が遅れています。本研究では、化学物質や生体分子の吸着量を測るケミカルバイオセンサとして、吸着分子間の分子間相互作用や質量に着目し計測するMEMS技術を研究しています。

超伝導センサーを用いたパッシブ型テラヘルツ光ナノスコピー

 テラヘルツ光は、電波資源の短波長化と光波資源の長波長化へ向けた技術的進展の狭間に残された未踏の光領域です。本研究では、高分子や生体材料などのソフトマテリアルの基礎物性分野に新たな分析手法を提案し確立すべく、テラヘルツ帯で動作する近接場顕微鏡技術(テラヘルツ光ナノスコピー)の創出を目指しています。具体的には、鋭く尖った金属探針を試料表面に近づけ、その局所から自然放出されたテラヘルツ光をフーリエ変換分光器で変調し、高感度の超伝導センサー(MKID、右図)アレイで検出するシステムを構築しています。この顕微分光イメージングシステムが実現すると、様々な機能性高分子や生体材料に固有の吸収スペクトル(指紋スペクトル)の起源解明や構造制御、新機能発現といった物性研究の新たな未来を切り拓くことが可能になると期待されます。

[基礎研究部門]革新センシング技術展開分野(ヒューマンブレイン及びロボティクス)

 IRES²で開発されたシリコンプローブやイオンイメージセンサ等を活用して脳情報の読み出しと制御に関わる研究を進めるとともに、神経科学のニーズに基づいた革新的な神経デバイス開発を目指します。また、ヒトの脳波を中心とした生体信号を計測・制御することにより、ヒトの認知処理に関わる神経ネットワークの解明の研究を進めながら、得られた知見をブレインマシンインターフェース (BMI) やニューロマーケティングなどへ応用していきます。

ウェアラブル「Team Flow」リアルタイムモニタリングおよび変調システム

 宇宙環境下での作業は、長時間の隔離、監禁、過酷な環境下となり、認知機能、行動機能の低下を招く可能性があります。また、この低下はクルーのメンタルヘルスにも影響を与え、例えばうつ病を発症するなど、チームワークの低下を招き、クルーのパフォーマンスやミッションの成功に悪影響を及ぼす可能性があります。NASAの人間研究プログラム(HRP)では、「人間要因と行動パフォーマンス(Human Factors and Behavioral Performance: HFBP)」というプログラムのなかで、「チーム」と「BMed」という2つのカテゴリーに分けて、これらのリスクを特定しています。本プロジェクトでは、宇宙ミッション中のチームの社会的共感を伴う最適なパフォーマンスを客観的に評価する手法を提供し、これらのリスクに対応する手法の開発を目的としています。

豊かな社会の実現に役立つロボットシステム

 ロボットが実社会で活躍するために解決しなければならない課題が多くあります。 それらを情報理論とメカトロニクスの融合させたシステム化によって解決をするために研究・開発を行なっております。特に、ヒューマノイドロボットのような複雑なロボットが有効に働ける分野の開拓、新たなロボットの使い方、新しいロボットの作り方について研究・開発を進めております。

 

さまざまな聴力の聞こえの再現と理解

 高齢化によって、老人性難聴者の人口は増え続けています。聴力が低下することによって、私たちの生活にある音の聞こえがどのように変わるか、を理解することは、音によるコミュニケーションの質の維持に欠かせません。聴覚末梢の計算モデルを応用した模擬難聴を利用して、実際の高齢者で測定した聴力(閾値)から聞こえている音を推定し、高齢者自身の聞こえと比較することで、聴力の異なる人の聞こえの高精度なシミュレーションを目指しています。また、聞こえの特徴から、聴覚のどの段階で機能低下が生じているかを推定することも目標としています。ことばだけでなく、音声にこめられた感情や、発話者の特徴など、コミュニケーションにおける広範囲の音を対象として、聞こえの世界を探っていきます。

 

[基礎研究部門]先端生命科学分野

 先端生命科学分野では、IRES²で開発された革新的な装置やツールを応用して、生化学、薬学、遺伝子、生物、神経活動、行動に至る生命科学を研究しています。設備としてげっ歯類、霊長類を用いた実験区域があり、共同研究を推進しています。これらの分野融合的研究は、将来の医療、福祉、環境への応用の基礎となることが期待されます。

 

遺伝子工学と先端技術の融合による新しい脳神経科学研究

 液滴電気穿孔法という革新的な細胞への遺伝子導入法を開発し、この技術でiPS細胞の量産やゲノム編集などの多様な遺伝子改変が可能である。また、研究所内で作成した超低侵襲の埋め込み式電極プローブを、疾患モデルマウスの脳に埋め込み、生きたままモデルマウスの脳活動を数か月単位で計測可能である。これらの実験系を、神経疾患の予防、治療、再生医療研究に展開する。また、一日を周期とする体内時計が制御する概日リズムなどの基礎研究、時間薬理学的研究などにも応用する。

新たな有機合成反応の開拓と機能性材料開発への応用

 1)新たな高機能光学活性触媒の開発、2)キラルハロゲン化合物の不斉合成、3)炭素-ハロゲン結合の開裂反応、4)キラル医農薬品の高率合成を主なテーマとして、従来達成困難であった反応や斬新な発想に基づくユニークな反応の開発にチャレンジしています。

[社会実装部門]次世代モビリティ社会分野

 次世代モビリティ社会分野では、モビリティ技術と交通マネジメント技術を中核においた、安全・安心な移動を保証する次世代モビリティ社会の実現を目標としています。そのために、交通ビッグデータ活用による交通システムマネジメント、環境と人の計測・認識による移動体(パーソナルモビリティ,次世代自動車)の安全性と性能の向上、周囲の危険検知による歩行者の安全性向上などの技術課題に取り組んでいます。基礎研究部門との密な協働による新たなセンサ・センシング技術の提案や利用とともに、社会実装に向けての地域社会・自治体との連携にも取り組んでいきます。

 

 

[社会実装部門]安心安全技術分野

 安全安心技術分野では,建築・都市に関わる研究にセンシング技術を融合させ,安全で安心して暮らすことができる都市・環境・地理・建設物に繋げるための技術研究を推進し,成果を実装することを目的としています。具体的には,都市や建物の現況把握に対するセンシング技術の融合と将来計画への発展,環境状態のセンシングによる人間活動環境・建物性能の向上や環境負荷低減への発展,建設物・地理情報とセンシング技術を融合させた高度防災技術展開に関する実装研究を進めます。

 

 

 

繊維強化プラスチックの建設分野への応用

 軽量で高強度なFRP(Fiber Reinforced Plastic)材を応用した建設構造物の補修補強法や、FRP構造物の設計法、また、FRP構造部材の接合法の改善に関する研究を行っています。これにより建設構造物の長寿命化・安全性の向上が可能となり、防災力の発展に繋がることが期待されます。また、軽量な構造物は建設時の省力化や自動化に寄与できる期待もあります。

[社会実装部門]先端アグリテック分野

 IRES²で開発されるセンサ・MEMSデバイスを活用した先端的農業生産技術を開発します。具体的には、植物工場などの環境制御型植物生産を対象として、植物生体情報に基づいた高度な栽培・労務管理を実現するための植物診断技術(クロロフィル蛍光、匂い成分、光合成・蒸散の計測)の開発と社会実装を行っていきます。また、太陽光植物工場技術で世界をリードするオランダの産業界・学術界とも緊密に連携し、植物診断技術の世界展開を目指します。

[社会実装部門]人間・ロボット共生分野

 人間・ロボット共生分野では、人とロボットとが共存し、豊かな生活を享受できる社会を目指し、生活支援ロボットや各種サービスロボット,農業支援ロボット,最先端の制御技術,アシスト技術,バーチャルリアリティー技術,コミュニケーション・インタラクション技術等の研究開発を進めています。近年では、多くの産学官連携プロジェクト,共同研究講座を通した大型の共同研究、さらには地域企業との共同研究を実施し、最先端ロボット技術の社会実装を進めています。さらに、基礎研究部門との密な協働により、次世代センサ・センシング技術のロボット応用についても取り組んでいきます。

 

 

 

 

 

寄附講座

決して見逃さない極微小金属異物検査システム

 超伝導現象を利用したSQUID (Superconducting QUantum Interference Device) 磁気センサは地磁気の10億分の1の微小磁場検出が可能です。高温超伝導薄膜を用いたSQUIDは液体窒素(-196℃)で冷却するだけで動作します。Liイオン電池などの製造工程で数10μm程度の微小金属検出が課題となっていますが、試作機では、φ18μmの金属異物を搬送速度100m/分、製品高さ数mmまで検出可能です。液体中での金属異物検出も可能です。