マイクロ流体チップテクノロジーを応用し、食中毒病原体の多検体・多項目の遺伝子検査を実現 ~遠心送液型デバイスによる簡便・迅速・低コストな現場即時検査の道を拓く~

 

 次世代半導体・センサ科学研究所 革新センシング技術創成分野 柴田隆行 教授(機械工学系)らと、城西大学 北村雅史 准教授、名古屋大学 山内悠輔 教授らの研究チームは、マイクロ流体チップテクノロジーを応用し、遠心送液型のマルチプレックス遺伝子診断デバイスの開発を行いました。従来は回転数を制御することで計量操作と分注操作を行っていましたが、本提案技術では、一定回転数の条件下において計量・分注操作を同時に行える逐次分注理論を構築し、デバイスの設計指針を明らかにしました。これによって、装置の簡略化とコストの低減が図れ、現場即時検査としての実用化が期待できるようになりました。さらに、4検体・5項目の遺伝子検査を同時に行えるマイクロ流体デバイスを開発し、等温遺伝子増幅法(比色LAMP法)に基づく食中毒病原体(サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、ノロウイルス)の多検体・多項目の同時診断を行い、デバイスの有用性を実証しました。本検査技術は、食中毒に限らず、食物アレルギー物質の検査や、人や農作物に感染するウイルス等の遺伝子検査にも適用ができる汎用性の高い技術です。現在、本提案技術の社会実装に向けて研究を推進しており、ウイルス感染症から「人々の命と健康」を守り、食物アレルギーや食中毒細菌から「食の安全・衛生」を守り、農作物の病害から「食料の安定供給」を守ることを目指しています。

■書誌情報:

Daigo Natsuhara, Yuka Kiba, Ryogo Saito, Shunya Okamoto, Moeto Nagai, Yusuke Yamauchi, Masashi Kitamura, Takayuki Shibata, A sequential liquid dispensing method in a centrifugal microfluidic device operating at a constant rotational speed for the multiplexed genetic detection of foodborne pathogens, RSC Advances, 14, 31 (2024) 22606-22617.

 

DOI: https://doi.org/10.1039/D4RA04055D

 

 

 

 遠心送液型マルチプレックス遺伝子検査デバイスの外観写真(上図:遠心力によって4種類の液体を同時に送液して5個の反応容器に計量・分注する様子)と等温遺伝子増幅法(比色LAMP法)に基づく食中毒病原体(サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、ノロウイルス)の4検体・4項目の同時検査結果(下左図:遺伝子増幅反応後のデバイスの様子。検体の種類に応じた反応容器の色が紫色(陰性)から水色(陽性)に変化。下右図:独自に開発した画像色解析システムによって取得した遺伝子増幅曲線)

 

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研究発表  2024.08.19