次世代半導体・センサ科学研究所 革新センシング技術創成分野 柴田隆行 教授(機械工学系)らと藤田医科大学 井平勝教授らの研究チームは、マイクロ流体チップテクノロジーを応用し、2検体・5項目の遺伝子検査を同時に行えるマイクロ流体デバイスを開発しました。本デバイスを用いて、等温遺伝子増幅法(LAMP法)による単純ヘルペスウイルス2種類の同時検査を実証しました。本デバイスは、検体・試薬の送液に必要となる外部ポンプ(シリンジポンプなど)を不要とし、電動ピペットによる簡易な送液を可能とする流路デザインとしたことで、検査の簡略化と作業者の二次感染のリスクを大幅に低減しました。さらに、独自の画像色解析手法を提案し、遺伝子増幅反応過程の陰性(紫色)から陽性(水色)に変化する色の変化(色相角度の変化量)を解析することで、遺伝子増幅曲線の取得が可能となり、検体サンプル中の標的遺伝子の定量解析を実現しました。これによって、リアルタイムPCRと同等の機能を実現することに成功しました。現在、本技術の社会実装に向けて研究を推進しており、「迅速・簡便・低コストに、誰でも、いつでも、どこででも手軽に多検体・多項目の遺伝子検査が実現できる世界」を目指しています。
■書誌情報:
Daigo Natsuhara, Akira Miyajima, Tomoya Bussho, Shunya Okamoto, Moeto Nagaia,Masaru Ihira, Takayuki Shibata, A microfluidic-based quantitative analysis system for the multiplexed genetic diagnosis of human viral infections using colorimetric loop-mediated isothermal amplification, Analyst, 149, 12 (2024) 3335-3345.
DOI: https://doi.org/10.1039/D4AN00215F
図 マルチプレックス遺伝子検査デバイスの外観写真(上図:単純ヘルペスウイルス2種類の同時検査を実現。陽性反応となった反応容器の色が紫色から水色に変化)と画像色解析技術によって取得した遺伝子増幅曲線(下図:単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)と2型(HSV-2)の遺伝子増幅反応。増幅曲線の立ち上がり時間から検体中の標的遺伝子の定量化が可能)