機械工学専攻 博士後期課程2年の夏原大悟(府大高専卒)、博士前期課程2年の齋藤亮吾(豊田高専卒)、柴田隆行VBL長(機械工学系教授)らの研究チームは、マイクロ流路内に極めて単純な微小構造体を非対称に配置するだけで、高効率な液体の混合を実現する革新的なマイクロミキサを開発しました。本提案のマイクロミキサは、独自の混合メカニズムを表現した“P-ACEマイクロミキサ”(Planar Asymmetric Contraction-and-Expansion Micromixer)と命名しました。現在、手のひらサイズのチップ上で様々な化学・生化学分析や細胞の操作・分析・培養などを実現しようというµTAS(Micro total analysis system)あるいはLOC(Lab-on-a-chip)と呼ばれる分野の研究が世界規模で盛んに行われています。ここでは、検体・試薬の混合、反応、分離、検出などの機能を1枚のマイクロ流体チップ上に統合する必要があります。その中でも高効率な混合を実現するマイクロミキサは、反応効率の向上や検査の信頼性の確保には欠かせない要素技術となります。しかし、これまでの先行研究は、複雑な流路構造を必要とし、製造コストや流路デザインの制約などの問題がありました。本提案のマイクロミキサは、作製プロセスが容易で、チップデザインを損なうことなく流路内に形成することが可能であり、ディスポーザブルでの使用が前提となるマイクロ流体チップの低コストかつ量産性に適したキーテクノロジーとして期待できます。
書誌情報:
Daigo Natsuhara, Ryogo Saito, Shunya Okamoto, Moeto Nagai, and Takayuki Shibata, Mixing performance of a planar asymmetric contraction-and-expansion micromixer, Micromachines, 13, 9 (2022) 1386.
DOI: https://doi.org/10.3390/mi13091386
図 3種類のマイクロミキサにおける2液の混合状態の比較(数値流体解析結果)
~非対称構造を有するP-ACEマイクロミキサは2液の流速と流れの方向が非対称となり混合を促進~
図 3種類のマイクロミキサにおける2液の混合状態の比較(実験結果)
~非対称構造を有するP-ACEマイクロミキサは流路長さ10mmで85%の高い混合効率を達成~